安部公房
JUGEMテーマ:◆おすすめな本
私の一番好きな作家 安部公房の本の紹介。
彼の本は飢餓同盟以外は全て良作。
何を読んでも面白いですが、私の個人的なお勧め3冊をご紹介いたします。
もう恐ろしい程前に読んだきりなので、内容に誤りがある事は間違いないですが、
私の記憶としては正しいので、そこは寛容の精神でご容赦下さい。
燃え尽きた地図
失踪したある男を追跡するという話し。
安部公房の手法はネガとポジの逆転を好むがこれもそれ。
自分の背中を知らない間に追いかけている的な奴です。
あんまり内容を書くとつまらなくなるし、私の粗末な書評でこの本を汚してはいけないので
触りを語るのはここまで。名作。
カンガルーノート
安部公房の遺作。
脛にカイワレ大根が生えて来た男。
訪れた病院の気になる看護師に、羞恥の象徴であるカイワレの処置を淫靡に期待しつつ、
医者に勧められた湯池へ、病院のベッドを車代わりに地獄を巡るという冒険譚。
よくわからないあらすじですが、夢の様に場面転換が起こるので大体こんな感じです。
安部公房の人間としてのアイデンティティ、コンプレックス、欲望、間主観性を踏まえて
死ぬ事、そしてその恐怖を描いた読後に心を揺さぶられるコメディ長編。名作。
箱男
箱を被り人間社会からの完全なドロップアウトを宣言した人間、箱男の話。
箱男は人間社会に存在していないとみなされる存在。
男の目的は覗く事。しかもただ一方的に覗くという事。
覗くという行為は覗かれかねないが、男が手に入れたのは一方的に覗くという立場。
箱男という非存在を利用して、男はある看護婦と医者の情事を覗こうとする。
しかし看護婦を巡り医者は偽箱男となり応戦、箱は高値で買い取られてしまう。
しかしそこから箱男的立場を巡る攻防。看護婦の情事を箱の隙間から覗く主導権争いの末
箱の隙間から覗き、覗かれているのは。
これもネガとポジを逆転させ主客がバターの様に美味しく混ざりあうのを狙った作品。
名作。
人間そっくり
あなたは本当に人間ですか?
人は人たる前提条件つまり本当に人間なのかという公理を疑われた場合、それをどう証明するのか。
その答えがここに詰まっています。
「こんにちは火星人」というふざけた番組をやっているラジオパーソナリティの元に
本当の火星人という人間が家にやって来る。曰く火星で住んでいた時の記憶をなくして、
地球人として暮らしているのをあなたを連れ戻しに来たと。
舞台はパーソナリティの家のみ。自らのアイデンティティを賭けた狂人との舌戦のみで
展開する物語は、安部公房の剛腕っぷりが遺憾なく発揮されています。名作。
4天王が5人いる様に、3冊のお勧めは4冊であるという事もあるのです。
先にも書いた様に大体何読んでも面白いので、気になった方は是非一度ご賞味を。
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